「笑顔を取りもどす。」糸賀良徳法律事務所

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寄せられたメッセージ

止まない雨はない/立花幸之介

「さぁ、水戸までひとっ走り!」見るからにメタボな私の最近の息抜きは、自転車に乗ることである。

数年前スポーツ用品ショップを暇つぶしにながめていたら、ロードレーサーというカテゴリーに属する自転車に目がくぎ付けになった。何気なく眺めていたらロードレーサーに乗って走っている自分が脳裏をかすめた。あくまでも自分の頭の中で創っているイメージなのだが…その姿はとてもスレンダー…(笑い)。以来、時間がある時にはロードレーサーに乗り、利根川などを中心に数時間走るようになった。

その日の私は水戸まで約70キロの道程を走る事に決めていた。走りだしたばかりの私の体を、朝風が冷たく刺すように通り過ぎていく。春先といえども、まだまだ早朝の風は冷たいようだ。 自転車のペダルを三十分も漕いでいると、身体の中が次第に熱くなってくる。今日も順調な滑り出しだ。パンクしないことを祈りながらペダルを漕いでいく。 一時間ほどペダルをこいでいた私は、何気なくサングラス越しから前方の水戸方面に視線を向けた。すると気づかないうちに前方に真っ黒な雲がムクムクと青空を掻き消すかのように現れていた。 「まずいな、雨が降り出すかもしれないな…」 私は不安を抱いた…その瞬間、ピッカ!!と雷が光だし、多少遅れて…ゴロゴロゴロ…と大きな音が鳴り出した。 家に戻るかどうかという判断をしかねていると、急激に真っ黒な雲が頭上を包み込むように広がった。突然、激しい雨が降りだしてきた。天から勢いよく降ってくるその雨の水滴ひとつぶ一粒が飴玉のように大きい粒のように感じられた。雨粒が背中にあたるたびに痛い。あっという間に全身がびしょぬれ。雨宿りする場所も見あたらない。必死にペダルを漕ぐ。眼の前に急な上り坂が現れた。坂の上から滝のように水が流れ落ちている。サングラスは水滴で覆われ視界不良。激流と化した坂を登る。ギア比を軽くしてペダルを漕ぐ。ペダルが重く感じられる。

「ちくしょう、まいったな…」と思いつつも、ペダルを漕ぐ。やっとの思いで急な坂を登り終えた。雨はますます激しく降っている。息を大きく鼻で吸って口からめいっぱい吐き出す。そんなことを繰り返しながら雨の中を必死でペダルを漕ぎ続ける。そのような状況下でふと、自分が生まれて初めて弁護士事務所を訪問したときのことが脳裏をかすめた。

それは、突然起こった。自転車で気持ちよくペダルを漕いでいるときに、当然豪雨に襲われた今の状況と同じように…

私が働いていた会社の従業員の対応ミスが誰も想像もしない「会社への訴訟」となって姿を現した。そして、誰もが熱く茹で上がったポテトを手にするとすぐにそのポテトをほかの人へと放り投げ、最悪なことにその熱く茹で上がったポテトは私の手のひらへと投げ込まれてしまった。ほかの人へ手渡そうとしても、もう誰も背を向けてそのポテトを受け取ろうとしない。私は四面楚歌となり、会社とその問題の板ばさみ。自分がメンタルヘルス危機に陥っていくのを実感していた。

そのような状況下を見かねた知人が、弁護士事務所を紹介してくれた。私はわらにもすがる面持ちで恐る恐る糸賀法律事務所の門を叩いた。 目の前の糸賀弁護士に、私はことの経緯や自分がいかに厳しい状況に立たされてしまったということを、ただひたすら無我夢中で話をした。 一通り私の話を聞いたあとに 「止まない雨はないのですよ。ヘラクレスの選択という話をご存知ですか?たとえ困難な道でも正当な道を歩むことを例えている寓話です。時間がかかっても正しい選択を一緒にしていきましょう」 と、言葉をかけてくれた。その時に、今まで胸の奥に抱え込んでいたどす黒い恐怖心や不安というものが一掃されるという心境を初めて体験した。

あれから、何年が経過したのだろう。雨に打たれながら自転車のペダルを漕いでいる私の脳裏に、あの日のことがはっきりと浮かび上がっていた。 「止まない雨はない…」

ふと視線を前方に向けると、青空が顔を出し始めていた。その日、何故私が水戸に向かって自転車を走らせていたのか。それは、糸賀弁護士が私費を投じてはじめたNPO「子供の未来」のイベントに参加するためであった。学校に行かない子供たちに支援しているのだ。「ストップ ザ いじめ」という襷をかけ、糸賀先生をはじめとして多くの方々が24時間千波湖畔を歩くという催しのスタートにあわせ、聖火ランナー気取りのメタボな私が自転車に乗り、肩に襷をかけて向かったのであった。

千波湖畔に着いたときには、すっかり青空が広がっていた。参加する方々は、みんな肩に襷をかけて私の到着を待っていてくれた。 私の到着と同時に、糸賀弁護士が笑顔でゆっくりと千波湖畔を歩き出す。それに並走するように多くの方々がそれぞれの思いを胸に歩き始めた…。

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